top of page

大丈夫なわけがない

  • 20 時間前
  • 読了時間: 2分

 孤独死した心がしばらくの間、野晒しにされていましたが、虎屋の羊羹をいただいたら亜光速で復活しました。虎屋の羊羹って、美味しいですよね。あれを日常的にいただいていたら、本当に、もう、どうにかなってしまいますよね。もうすでにどうにかなってしまっていますが。


 突然ですが、年に一度、救急車を呼ぶイベントが唐突に発生します。人が僕の目の前で倒れるからです。すでに倒れている場合もあります。今年は五月にやってきました。今回は、倒れて間もないタイミングで、先に気づいた自転車の男性が駆け寄っているところでした。倒れていたのは、七十〜八十歳と思しき男性でした。アスファルトには、弁当二つと、ペットボトルの水がレジ袋を破くようにはみ出していました。額に汗をにじませる僕とは裏腹に、老人の顔から一切の色が消えていました。わずかに動く唇と、目尻からアスファルトへとつたう涙だけが、その人の意識を知らせていました。いくつかの質問に瞬きで答えてもらったところ、一人暮らしであること、家が近くであること、きちんと声が聞こえていることがわかりました。

 幸いにも倒れた場所は大通り沿いの歩道で、建設会社の真横であったため、そこの方々の力を借りて、救急隊員に引き渡すまでスムーズな対応を取ることができました。どうか命が繋がっていてほしいと今でも願うばかりです。


 倒れたる老人の傍のレジ袋

 二つの弁当切なくほころぶ


 虎屋の羊羹がどうしようもなく美味しいのは、その味だけが理由ではありません。本当に苦しかった時期には、美味しいものを食べることさえ難しい日がありました。だからでしょうか。老人の傍らにあった二つの弁当が、妙に心に残っています。あれもまた、誰かの一日を支え、命を繋ぐための食事だったはずです。食べ物は、値段や見た目だけでその価値が決まるものではないのかもしれません。


 出来事のすぐ後、救急隊員の方から電話がありました。お礼と、現場にあったハンカチが僕のものではないかという確認でした。急いでいたので、受け取りには戻れないと伝えたところ、「それでは処分しますね!」との返答。「大丈夫です」と僕は二つ返事をしました。処分。師匠からもらったハンカチでした。もう処分済みですね。燃えカスです。大丈夫なわけがない。ご臨終です。


 僕は、虎屋の羊羹はぜ〜んぶ大好きです。はちみつが特に好きです。絶対に誰にもあげない。誰もいないけど。





 
 
 

コメント


bottom of page