#裏切らないこと
高校2年生から個人塾に通っていた。
マンツーマンレッスンの個人塾ではなく、
先生が個人で運営しているタイプの個人塾。
その先生がいい意味で変わっている人だった。
達観しているというか、悟っているというか、
そんな感じの雰囲気を纏っていた。
歳は僕世代の親よりも少しばかり上くらいだろうか。
女性の先生だった。
先生は学生時代、美学を専攻にしていたと聞いた。
それゆえに、なんてことない質問も少し哲学的に答えてくれた。
「美学なんて何の役にも立たないわよ。だけど、好きだったんだからしょうがないわよね」
そう言っていた。
ある日先生に、
「裏切られるより裏切る方が辛いわよ」
と言われた。
今でもはっきり脳裏に焼き付いている。
大学生の頃から人と距離を取ることが増えた。
嫌なことから逃げたかったんだと思う。
裏切られるのが怖かったし、
自分が誰かを裏切るような気もしていた。
結果として今、嫌な思いを引きずったり思い出すことがないから、
誰かを裏切ることはなかったんだと思う。
裏切られたことはあったけど、
そんなのなんてことないと思えるところまで濃度は下がった。
今僕には家族以外に大切な人が、
片手から両手の指の数ほどいる。
手を見ると指人形みたいにその人たちの顔が浮かぶ。
大切なんだと思う。
絶対に傷つけたくない人たちだ。
裏切られるかもしれないと思うことが
裏切ってるのではないかとも感じてしまう。
そう考えることすら辛い。
だから、もし仮に裏切ってしまったとしたら、
言葉にならないくらい苦しくて辛いんだと思う。
たとえ裏切られたとしても僕は構わない。
許さないかもしれない。
でも決して裏切ることはしたくないと思う。
今日も遊びに来てくれてありがとう。
ときには許さないことも大切で、
そうすることで自分の心を安らげることもできる。
裏切るということは贖罪を背負って生きることかもしれない。
そんな人生は誰も幸せにならない。
それでは、また明日。
お粗末様でございました。




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